衛生委員会の議事録の書き方4ステップ|記載すべき項目や保存・周知の義務も解説
常時50人以上の労働者がいる事業場では、衛生委員会の設置が法律で義務づけられています。衛生委員会を開催したら、重要な議事等を記録して3年間保存し、議事の概要を労働者へ周知しなければなりません。
ただ、いざ書こうとすると、
- 議事録には何をどこまで書けば法令を満たすのか
- 保存の期間や周知の方法にどんな決まりがあるのか
- 初めて担当することになったが、どんな手順で進めればよいのか
といった疑問が生じます。
そのためこの記事では、衛生委員会の議事録に記載すべき項目と書き方を4ステップで解説します。労働安全衛生規則第23条が求める3つの義務を整理し、逐語録が要らない理由やテンプレートの例まで紹介します。「今月の分をどう仕上げるか」で手が止まっている方は、ぜひ最後までご覧ください。
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衛生委員会の議事録に課される3つの義務
衛生委員会の議事録に求められることは、労働安全衛生規則(安衛則)第23条に書かれています。開催の都度の記録、その記録の3年間の保存、議事の概要の周知。この3点です。発言を一字一句残す逐語録までは求められていません。
衛生委員会の議事録は、業務効率化のためだけでなく、法令遵守の観点から継続的に作成・保存する必要があります。つまり、作るのをやめるという選択肢が最初からありません。目指すのは、法令が求める中身を毎月ぶらさずに残し、そこにかける時間を小さくすることです。
1. 開催の都度、議事録を作成する
議事録の作成は、安衛則第23条第4項に基づく義務です。開催のたびに記録するよう求められているのは、次の2つです。
- 委員会の意見および当該意見を踏まえて講じた措置の内容
- 上記のほか、委員会における議事で重要なもの
条文は、この2つを号に分けて挙げています。記録する対象がここまで具体的に書かれている点は、押さえておきましょう。どこまで書くかで迷ったときは、ここに戻ると判断が付きます。
「何を話し合ったか」の記録だけでは足りません。委員会の意見、その意見を踏まえて事業者が講じた措置に加え、その他の重要な議事も記録します。
衛生委員会の記録については、保存義務に違反した場合、労働安全衛生法第103条第1項・第120条第1号により50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。記録の作成・保存を含め、法令に沿って適切に運用しましょう。
2. 作成した記録を3年間保存する
保存の期間は3年間です。安衛則第23条第4項が、記録の作成と保存をひと続きで定めています。紙で保存するほか、電磁的記録で保存することも可能です。ただし、電子保存する場合は、労働基準監督官等による臨検時などに必要事項を直ちに確認でき、写しを提出できる状態にしておく必要があります。
決めておくことは3つです。保存場所を一元化して管理者が把握できる形にすること、電子データならバックアップを取っておくこと。そして、保存期間の起算日をはっきりさせておくことです。
起算日でいえば、開催した日と議事録を仕上げた日のどちらから数えるかを、社内で1つに決めておきましょう。条文は起算点まで書いていません。月をまたいで仕上げた回が混ざると、担当者ごとに数え方が変わり、3年目の廃棄の判断でぶれます。会議体ごとの年限と数え方をまとめて整理したい場合は、会議別の法定保存期間を一覧にした記事が手がかりになります。
たとえば社内の共有サーバーに年度別のフォルダを作り、そこへ集める方法が一般的です。保存場所が分散すると、後から探す手間が増えます。
会議体が変われば、保存の年限も根拠となる法律も変わります。取締役会の議事録は会社法に基づいて10年の保管が求められ、記載事項も衛生委員会とは別に定められています。自社に複数の会議体があるなら、年限の一覧を1枚作っておきましょう。
参考記事:取締役会議事録の書き方|会社法第369条準拠の記載例・電子化・10年保管ルール
3. 議事の概要を遅滞なく労働者へ周知する
周知は安衛則第23条第3項の義務です。開催の都度、遅滞なく、議事の概要を労働者に知らせなければならないと定められており、その方法も次の3つに限られています。
- 常時各作業場の見やすい場所に掲示するか、備え付ける
- 書面を労働者に交付する
- 電子データとして記録し、各作業場に内容を常時確認できる機器を設置する
3つすべてを行う必要はありません。自社の環境に合う方法を1つ選べば足ります。
注意したいのは3つ目です。電子データとして記録するだけでは、条文の求めを満たしません。各作業場に、その内容を常時確認できる機器を置くところまでがセットになっています。社内ポータルに載せて終わりにすると、共有端末を持たない現場の労働者には届きません。工場や店舗を抱える会社では、掲示や書面の交付と組み合わせる判断も要ります。
周知の方法が決まっても、実際に読まれるかどうかは別の話です。誰に、いつ、どの粒度で届けるか。この悩みは社内の他の議事録にも共通します。
参考記事:【例文あり】議事録を共有するときの3つのポイント!効率化するAI議事録ツールも紹介
保存する議事録と周知する議事の概要は同じものか
同じでなくて構いません。条文が対象を分けているためです。3年間の保存を求めているのは「記録」で、周知を求めているのは「議事の概要」です。
実務では、詳しい議事録を1つ作って保存し、そこから個人が特定できる情報を外した概要版を掲示や配布に回す形が現実的でしょう。衛生委員会は健康の話を扱います。全文をそのまま貼り出す前提にすると、書けなくなる議題が出てきます。
周知用の概要版だけを作る場合でも、安衛則第23条第4項が求める「委員会の意見」「その意見を踏まえて講じた措置」「その他の重要な議事」が記録されていれば、別に詳細版を作成することまで求められているわけではありません。
周知用と保存用を分ける場合は、保存用の記録に必要事項を欠かさないようにしましょう。役割が2つあると知っておくだけで、毎月の判断が速くなります。
参照:Q 安全委員会、衛生委員会について教えてください。|厚生労働省
議事録を書く前に押さえる衛生委員会の基本
出席者の欄に誰を書くのか、何を議題にできるのか。この2つは委員会そのものの作りを知らないと決まらないため、設置の根拠と構成メンバーを先に押さえておきます。
設置の基準と開催の頻度
衛生委員会は、労働安全衛生法第18条に基づいて設ける組織です。労働安全衛生法施行令第9条により、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、業種を問わず設置が義務づけられています。
主な目的は、労働者の健康障害を防ぎ、健康の保持増進を図ることです。職場環境の改善、長時間労働への対策、メンタルヘルス対策といった議題を、事業者に意見を述べるために調査審議していきます。開催は毎月1回以上と定められています(安衛則第23条第1項)。
なお、製造業や建設業など一定の業種では安全委員会の設置義務もあります。両方を設けなければならない場合は、それぞれの委員会の設置に代えて「安全衛生委員会」を置けます。労働安全衛生法第19条が認めている運用です。
構成メンバーと審議する事項
衛生委員会の委員は、労働安全衛生法第18条第2項で次のように定められています。
- 議長:総括安全衛生管理者、または事業の実施を統括管理する者かこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者(1名)
- 衛生管理者:衛生管理者のうちから事業者が指名した者
- 産業医:産業医のうちから事業者が指名した者
- 労働者委員:その事業場の労働者で、衛生に関し経験を有する者のうちから事業者が指名した者
議長以外の委員は、半数を労働者側の推薦に基づいて指名しなければなりません。推薦するのは労働者の過半数で組織する労働組合で、それが無い事業場では労働者の過半数を代表する者が推薦します。
審議する事項も同じく法第18条第1項に挙げられています。
- 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策
- 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策
- 労働災害の原因および再発防止対策のうち、衛生に係るもの
- そのほか、労働者の健康障害の防止および健康の保持増進に関する重要事項
4つ目の「重要事項」の中身は、安衛則第22条がさらに細かく挙げています。衛生に関する規程の作成、衛生教育の実施計画の作成、作業環境測定の結果とその対策、定期健康診断の結果への対策。
さらに、長時間労働による健康障害の防止や、労働者の精神的健康の保持増進も含まれます。リスクアセスメント対象物に関するばく露低減措置や健康診断、行政から受けた指導や勧告への対応などを含め、全部で12項目です。
毎月の議題に迷った場合は、安衛則第22条に定められた事項を確認すると整理しやすくなります。
実際に議題へ挙がるのは、健康診断の実施と結果への対応、長時間労働による健康障害の防止、メンタルヘルス対策などです。夏場の熱中症対策も定番の1つです。ストレスチェックの集団分析の結果を踏まえた職場環境の改善も、毎年のように取り上げられるテーマになります。
議題が思いつかないときの手がかりも、条文の中にあります。安衛則第23条第5項は、産業医が委員会に対して必要な調査審議を求められると定めた規定です。「次回、取り上げたほうがよい話はありますか」と産業医に聞いてみましょう。専門家の視点から議題が出てきます。
参照:衛生委員会[安全衛生キーワード]|職場のあんぜんサイト
衛生委員会の議事録に記載すべき項目
法令上は、委員会の意見、その意見を踏まえて事業者が講じた措置、その他の重要な議事を記録する必要があります。そのうえで、後から当日の状況を確認できるよう、実務では次の項目を揃えておきます。
1. 基本情報(開催日時・場所・出席者)
議事録の冒頭には、次の基本情報を書きます。
- 開催日時:月1回以上の開催を証明する記録になります
- 開催場所:会議室名を書きます(オンライン開催ならその旨も)
- 出席者:氏名と役職(議長・衛生管理者・産業医・労働者委員など)を明記します
出席者には役職も併記すると、誰がどの立場で出席していたかを後から確認しやすくなります。産業医が欠席したときも、欠席という事実を残しておきましょう。
2. 審議内容と委員会の意見
次に、衛生委員会で話し合われた内容を書きます。大切なのは、参加者個人の発言を逐一追うのではなく、委員会全体としての議論の要点をまとめることです。
意識したいのは、次の3点です。
- 議題(テーマ)を明記する
- 討議の要点を簡潔にまとめる
- 「委員会としての意見」を明確に書く
たとえば「委員会として、作業場の温度管理の基準を見直すべきとの意見でまとまった」のように書きます。結論がどこにあるか一読で分かる形が理想です。
議題の背景や経緯も1行添えておきましょう。この記録を後から読むのは、監督署の担当者、後任の事務局、その日欠席した産業医です。背景が無いと、決定の意味まで読み取れません。
3. 決定事項と事業者が講じた措置
議事録の中でも要になる部分です。次の3つを分けて書きましょう。
- 委員会の意見:委員会として事業者にどのような意見を述べたか
- 決定事項:その意見を受けて何が決まったか
- 措置内容:事業者が実際に講じた措置を記載します。今後実施する対応は、対応予定として分けて記載するとよいでしょう。
具体的には、次のように書きます。
意見は「夏季の作業場の温度管理を強化すべき」。決定事項は「空調設備の設定温度を見直す」。措置は「総務部が7月15日までに各フロアの設定温度を確認し調整する」。この形です。
担当者と対応期限まで書いておくと、次回の委員会で進捗を確認できます。記録が単なる記録で終わらず、職場を実際に良くしていく仕組みの一部になります。
逐語録までは求められていない
安衛則第23条第4項が求めているのは「議事で重要なもの」であって、全発言を残すようにとは書かれていません。ここを取り違えると、毎月の作業が何倍にもふくらみます。
そもそも逐語録は、発言をそのまま文字に起こした別の種類の記録です。議事録との違いや、どんな会議で必要になるかは逐語録とは何か、議事録との違いと作り方をまとめた記事にまとめています。
もっとも、どこまで書くべきかの感覚は社内でも割れます。Otolioが企業と重ねてきた商談では、同じ会社の中でも議事録に求めるものが二手に分かれるという話が繰り返し出てきました。法務・コンプライアンス部門や、利害が対立する会議では、誰が何を言ったかまで残したい。一方で日々の打ち合わせは、決まったこととやることさえあれば足ります。この2つを1つの書式で回そうとすると、両側から不満が出ます。
衛生委員会では、安衛則第23条第4項が求める「委員会の意見」「その意見を踏まえて講じた措置」「その他の重要な議事」を記録すればよく、全発言の逐語記録までは求められていません。ただし、労働時間や作業環境の改善など、労使の利害に触れる議題では、必要に応じて発言の趣旨まで残しておくと後の行き違いを防ぎやすくなります。
同じ「関係者の意見を残す会議」でも、労使協議会のように発言レベルの記録が期待される会議体もあります。記載項目や保管の考え方は衛生委員会と近い一方、求められる記録の粒度が異なります。
参考記事:労使協議会の議事録の書き方4ステップ|記載項目・保管・効率化のコツも解説
衛生委員会の議事録の書き方4ステップ
ここからは実際に作る手順です。初めて担当する方が当日から迷わず進められるよう、4つのステップに分けました。
1. フォーマットを事前に用意する
まず、ひな形を先に作ります。法令で定められた議事録の様式はありません。自社で作った書式でも、公開されているものを使っても構いません。法令が求める事項を満たしていれば、形式は自由です。
ひな形に含めておきたい項目は、次のとおりです。
- 開催日時・開催場所
- 出席者(氏名・役職)
- 議題
- 審議内容(討議の要点)
- 委員会の意見
- 決定事項
- 事業者が講じた措置
- 今後の対応予定(担当者・期限)
- 前回の決定事項の進捗
- 次回開催予定
一度作れば、毎月そのまま使い回せます。表計算ソフトで記入欄を固定しておくと、担当が誰であっても同じ形の記録になります。
以下は衛生委員会の議事録テンプレートの一例です。自社の運用に合わせて手を入れてご活用ください。
衛生委員会 議事録
開催日時:〇〇年〇月〇日(〇)〇時〇分〜〇時〇分
開催場所:〇〇会議室、またはオンライン(使用ツール:〇〇)
出席者 議長:〇〇(総括安全衛生管理者) 衛生管理者:〇〇 産業医:〇〇 ※欠席の場合はその旨を記載 労働者委員:〇〇、〇〇前回決定事項の進捗確認
決定事項:(前回の決定事項を転記)
担当者:〇〇 期限:〇月〇日 進捗:完了・対応中・未着手のいずれかを記載議題1:〇〇について
背景・経緯:(議題が上がった背景を簡潔に記載)
討議の要点:(主な意見・論点をまとめて記載)
委員会の意見:(委員会としての結論を記載)
決定事項:(決まったことを記載)
事業者が講じた措置:(実施済みの措置を記載)
今後の対応予定:(対応内容・担当者・期限を記載)議題2:〇〇について (議題1と同じ形式で記載)
その他・連絡事項:(周知事項などを記載)
次回開催予定:〇〇年〇月〇日(〇)〇時〇分〜
会議の種類ごとに書式を用意しておきたい場合は、必要項目の決め方と会議別の型をまとめた記事があります。衛生委員会以外の定例会議にも、同じ考え方がそのまま使えます。
参考記事:議事録フォーマットの基本|会議別の書き方・必要項目・効率化のコツを解説
2. 基本情報と出席者を正確に記録する
衛生委員会の冒頭で、開催日時・場所と出席者の情報を記録します。氏名と役職は漏れなく書きましょう。
特に見ておきたいのが産業医の出欠です。産業医が欠席した場合は、自社の委員会運営ルールに従い、必要に応じて議事内容を共有し、意見を確認するとよいでしょう。
欠席という事実をその場で残しておきましょう。ほかに欠席者がいる場合は、氏名と理由も添えておくと、後から経緯を追う人が助かります。
3. 議事内容を要点ベースでまとめる
各議題について、討議のポイントを要点で記録します。衛生委員会の議事録に逐語録は求められていません。何が議論され、どのような意見が出たか。これを簡潔にまとめれば足ります。
意識したいのは、事実の記録に背景を一言添えることです。「熱中症対策について」とだけ書くのでは足りません。「7月の気温上昇を受けた熱中症対策の検討」のように、なぜその議題が上がったのかまで残しておきます。
要点だけを残す書き方は、社内会議の議事録の書き方で会議の種類ごとに整理しています。
4. 決定事項と措置を区分して記載する
仕上げで最も注意したいのがここです。「委員会の意見」「決定事項」「事業者が講じた措置」を明確に区分して書きます。
3つが混ざると、結局何が決まったのかを読み取れません。それぞれを項目として分け、今後の対応予定には担当者と対応期限も明記しましょう。
次回の委員会で前回の決定事項の進捗を確認する仕組みも、あわせて作っておきます。記録が、職場環境を改善していく回転の軸になります。
自社の運用ルールに応じて、議長や産業医などの関係者に内容を確認してもらい、必要な修正を反映して最終版とします。
衛生委員会の議事録作成で押さえたい3つの注意点
法令の要件を満たしていても、扱い方を誤れば別の問題を生む部分があります。特に、機微性の高い健康情報を毎月扱う委員会では、書き方だけでなく、情報の取り扱いや運用面への配慮も重要です。押さえておきたいのは次の3点です。
1. 個人情報の取り扱いに配慮する
衛生委員会では、健康診断の結果やストレスチェックの実施状況など、個人の健康に関わる議題が出ます。周知する議事の概要には、個人を特定できる健康情報を原則として載せないよう配慮しましょう。
保存用の記録に個別情報を含める必要がある場合も、利用目的や閲覧権限を限定するなど、適切に管理することが重要です。
一方、周知する議事の概要では、「Aさんの健康診断でBの所見があった」のように個人を特定できる健康情報を載せることは避け、「有所見率が〇%であった」のように必要に応じて統計データとしてまとめます。
理由は周知義務にあります。議事の概要は、当該事業場の労働者に周知する必要があります。個人の健康情報が含まれていれば、プライバシーの侵害につながりかねません。
2. 産業医が欠席した場合は委員会の運営ルールに沿って対応する
法令上、産業医の出席が一律の開催要件とされているわけではありません。欠席したときの意見聴取を義務づける明文の規定もありません。出席を開催要件とするかどうかは、各委員会の運営ルールを確認してください。
それでも、産業医は委員会に対して必要な調査審議を求められる立場にあります(安衛則第23条第5項)。議事内容を共有しないまま次の回に進むと、専門家の意見を委員会の運営に反映できないおそれが残ります。実務上は、次回の委員会までを目安に議事内容を共有し、必要に応じて意見を確認しておきましょう。
共有の仕方にも幅があります。Otolioが事例取材で聞いた運用では、要点をまとめた文書に加えて、気になった箇所の音声に戻れる状態で渡していました。受け取る側の負担が、そのほうが軽くなるためです。要約には、そのときどこが引っかかっていたかまでは残りません。専門家に判断を求めるなら、判断の材料ごと渡すほうが確実です。
後日意見を聴いた場合は、委員会当日の意見と混同しないよう、聴取日を明記したうえで「後日確認した産業医の意見」などとして記録するとよいでしょう。
たとえば「産業医〇〇は所用により欠席。〇月〇日に意見聴取を実施」と書いておきます。経緯が残っていれば、次の委員会で「そういえばあの件はどうなったか」と探す時間もいりません。
3. 担当者が変わっても記録の水準を落とさない
衛生委員会は毎月あります。年に12回、同じ水準の記録を残し続けなければなりません。ところが担当が交代すると、どこまで書くかの感覚も書式の使い方も変わります。前年の議事録と見比べて、別の会議のように見えることさえあります。
Otolioが実施した250件以上の導入企業アンケートでも、同じ声が繰り返し出てきます。担当者によって議事録の完成度や粒度がばらつく、というものです。特定の人しか書けない状態になっている、という指摘もありました。
対策そのものは複雑ではありません。ひな形を固定して記入欄を動かさない。決定事項の書き方を1つに決めておく。過去の議事録を後任がすぐ見つけられる場所に置く。この3つを決めておくだけで、引き継ぎのときに落ちる情報がかなり減ります。
衛生委員会に限らず、社内の議事録全体で書式と運用ルールを揃えたい場合もあるでしょう。全社で標準化を進める手順をまとめた記事が参考になります。
参考記事:議事録を全社で標準化する5ステップ|テンプレ・運用ルール・AI議事録ツールまで解説
毎月の衛生委員会を無理なく回すために
1回分の書き方が分かっても、それで終わりではありません。来月も、その次の月もあります。年12回続く前提に立って、議題の決め方と記録の手間の減らし方まで見ておきましょう。
2026年時点で議題に上がりやすいテーマ
議題は、季節と法改正の2つから拾うと組み立てやすくなります。
2025年6月1日には改正労働安全衛生規則が施行され、一定の暑熱環境下で行う作業について、熱中症のおそれがある作業者を早期に発見するための体制整備や、重篤化を防ぐための手順の作成・周知が事業者に義務づけられました。
熱中症を生ずるおそれのある作業では、自覚症状のある人や、そうした人を見つけた人が報告できる体制を定めて周知すること、併せて、症状の悪化を防ぐための措置の内容と手順を定めて周知することの2つが求められます(安衛則第612条の2)。
対象になる作業には、条件が決まっています。WBGT(暑さ指数)28度以上、または気温31度以上の環境であること。そこで連続1時間以上、または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業であること。この2つです。
業種の限定はありません。屋外作業だけでなく、空調のない倉庫や厨房でも、上記の温度・作業時間の条件を満たせば対象となります。自社の作業がこの条件に触れるかどうかは、夏を迎える前に委員会で確認しておきたい論点です。
この義務には罰則も付いています。体制と手順を定めずに対象の作業をさせた場合、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されることがあります。拘禁刑とは、懲役と禁錮を一本化した刑のことです。努力義務ではない点は、委員会の場で共有しておきましょう。
もう1つ、先を見た議題があります。2025年5月、改正労働安全衛生法が公布されました。これにより、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務づけられます。
施行日は2028年4月1日です。2026年6月10日に施行期日を定める政令が公布され、日付が確定しました。複数の事業場を持つ会社なら、50人未満の拠点をどう扱うかを早めに議題へ上げておきましょう。実施の体制づくりも予算の確保も、決めるまでに時間がかかります。
季節に合わせたテーマも定番です。夏は熱中症、冬は感染症の予防、年度替わりは健康診断の受診勧奨。ストレスチェックの集団分析の結果が出たタイミングも、職場環境の改善を議論する好機になります。
記録そのものにかかる手間を減らす
毎月の負担を下げる工夫は、大きく2つに分かれます。段取りで減らすものと、記録の作り方そのものを変えるものです。
段取りでできることは、次の3つです。手を動かす前に決めてしまえば、毎月の作業から迷う時間が消えます。
- 前月の議事録を複製して次月分の下地にする
- 出席者や定例の議題など、会議前に分かる情報は先に埋めておく
- 前回の決定事項と進捗の確認欄を冒頭に置き、確認漏れを防ぐ
そのうえで、記録の作り方自体を見直す余地があります。委員会の音声を録音しておけば「あのとき何と言ったか」を後から確認できます。
ただし、健康情報を扱う可能性があるため、録音データの利用目的・閲覧権限・保存方法などの取り扱いルールをあらかじめ定めておきましょう。
同アンケートで最も多く語られていたのも、議事録の悩みでした。作成に時間を取られ、本来の業務が後回しになるというものです。衛生委員会は毎月ある会議です。1回あたりの負担が小さくても、年単位では無視できない量になります。
近年は、録音した音声をAIが自動で文字にし、要点の抽出や話者の切り分けまで行うツールが増えました。委員会で使われる専門用語まで正しく拾えるものを選べば、記録の質と作成にかかる時間の両方に効きます。
まとめ|衛生委員会の議事録は法令が求める3点を毎月残すこと
本記事では、衛生委員会の議事録に記載すべき項目と書き方を4ステップで解説しました。
押さえどころは3つです。開催の都度、委員会の意見と講じた措置を含めて記録すること。その記録を3年間保存すること。議事の概要を遅滞なく労働者へ周知すること。求められているのは、後から読んで判断の経緯をたどれる記録です。逐語録は要りません。
議事録は、保管庫にしまうための書類にとどまりません。決めたことの進捗を追い、職場環境を実際に良くしていくための道具です。ひな形を整え、書く範囲を先に決めてしまえば、毎月の作業はぐっと軽くなるはずです。まずは今月の分から、この記事で挙げた項目に沿って組み立ててみてはいかがでしょうか。
ここまでで、何をどこまで書けばよいかは決まったはずです。ただ、衛生委員会は来月も再来月もあります。年に12回、同じ水準を保ち続ける負荷は、1回分の手順を覚えただけでは軽くなりません。書く範囲を決めたあとに残るのは、聞いて、まとめて、形にするという毎月の手間そのものです。
衛生委員会の議事録で時間がかかるのは、書式を決める作業より、話された内容を要点に落とす作業です。Otolioは会議の音声から要点・決定事項・やることを自動でまとめるため、担当者は出てきた内容を確認して整えるところから始められます。累計利用社数8,000社以上、大手企業から自治体まで幅広くご利用いただいた実績があります。まずは14日間、今月の委員会でそのままお試しください。
よくある質問とその回答
Q. 衛生委員会の議事録を作成しないと罰則はありますか?
衛生委員会の記録について「罰則がない」とは言い切れません。記録の保存義務に違反した場合は、労働安全衛生法第103条第1項・第120条第1号により50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。議事の概要の周知も法令上の義務であるため、開催の都度、記録を作成・保存し、議事の概要を遅滞なく周知しましょう。
Q. 議事録は紙とデータのどちらで保存すべきですか?
紙でも電磁的記録でも保存できます。電子保存する場合は、労働基準監督官等による臨検時などに必要事項を直ちに確認でき、写しを提出できる状態にしておく必要があります。検索のしやすさなどを考えると、電子データのほうが扱いやすいでしょう。あわせて、3年をいつから数えるかも社内で1つに決めておきます。なお、保存する詳細な記録と周知する議事の概要は目的が異なるため、必要に応じて分けて管理します。
Q. 衛生委員会と安全衛生委員会の議事録に違いはありますか?
基本的な記載項目や保存・周知の義務は共通です。安全衛生委員会は、安全委員会と衛生委員会を1つにまとめた組織で、労働安全衛生法第19条により設置が認められています。違いは、議事録で扱う範囲です。安全面と衛生面の両方を審議するため、記載する議題はその分だけ広がります。
Q. 議事録のフォーマットは法律で決まっていますか?
決まっていません。法令で定められた議事録の様式はなく、自社で作った書式でも、公開されているテンプレートを使っても構いません。労働安全衛生規則第23条第4項が求める事項を網羅していれば、形式は自由に決められます。
Q. オンラインで開催した場合の議事録はどう書けばよいですか?
記載すべき項目は対面開催のときと同じです。開催場所の欄に「オンライン開催(使用ツール:〇〇)」と書き、出席者についてもいつもどおり氏名と役職を記録します。接続の不具合で一時的に参加できなかった委員がいた場合は、その事実も残しておくと、後から経緯を確認しやすくなります。