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議事録作成

株主総会議事録の書き方|会社法第318条準拠の記載事項・保存期間・電子提供制度を解説

株主総会の運営を担当していると、議案書や招集通知の準備に追われがちです。そのうえ議事録の体裁ひとつでも「この書き方で会社法上、本当に問題ないだろうか」と不安になる場面が多いのではないでしょうか。

しかしながら、

  • 取締役会議事録と同じ感覚で作ってしまい、根拠条文が混ざってしまう
  • 「本店10年・支店写し5年」という保存期間の二段階構造をうまく社内に説明できない
  • 2022年9月に始まった電子提供制度に合わせて、議事録の運用をどう変えればよいかが整理できていない

といったお悩みを抱える総務・法務のご担当者は少なくありません。

そのためこの記事では、会社法第318条に基づく作成義務から、施行規則第72条の法定7項目・決議種別ごとの記載例・本店10年と支店写し5年の保存ルール・電子提供制度への影響までを、総務法務の実務目線で解説します。

株主総会議事録は、その日の意思決定を10年残す法定文書であると同時に、役員変更や定款変更の登記申請にも使われる重要書類です。要件を一覧で押さえてから当日を迎えるだけで、運営の安心感は大きく変わります。まずは条文の構造と書き方の型を整理し、自社の総会運用にそのまま落とし込める状態をつくっていきましょう。

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目次

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株主総会議事録とは|会社法第318条が定める作成義務と意義

1. 株主総会議事録の定義(会社法第318条第1項)

株主総会議事録とは、会社法上の機関である株主総会で行なわれた議事の経過の要領とその結果を記録する法定文書です。会社法第318条第1項は、株主総会の議事については法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならないと定めています。

ここでいう「法務省令で定めるところ」とは、会社法施行規則第72条のことです。この条文に、議事録に記載すべき項目が具体的に列挙されています。

書面で作成しても電磁的記録で作成しても、法的な効力は同じです。書面の場合は紙で残し、電磁的記録の場合は電子データとして保管します。

参照:会社法 | e-Gov法令検索

2. 取締役会議事録との違い|根拠条文・署名押印・保存期間

株主総会議事録と取締役会議事録は、いずれも会社法に基づく議事録ですが、根拠条文も要件もまったく異なります。社内で同じテンプレートを流用すると、要件の取りこぼしや過剰記載が起こりやすくなります。

たとえば、株主総会は会社の最高意思決定機関で、定時総会は事業年度ごとに1回、臨時総会は必要に応じて開催されます。一方の取締役会は業務執行の意思決定機関で、3か月に1回以上の開催が義務付けられています。

観点株主総会議事録取締役会議事録
根拠条文会社法第318条会社法第369条第3項
記載事項会社法施行規則第72条会社法施行規則第101条
署名押印法律上は要求されない(実務上は議長・議事録作成者が記名するケースが多い)出席取締役・監査役の署名または記名押印が必要
保存期間本店10年・支店写し5年(会社法第318条第2項・第3項)取締役会の日から10年・本店備置(会社法第371条)
主な用途役員変更・定款変更などの登記添付書類/株主への閲覧対応業務執行の意思決定の証跡/株主代表訴訟への備え

株主総会議事録は「会社の最高意思決定」を残す書類で、取締役会議事録は「業務執行の意思決定」を残す書類です。条文番号も施行規則の項目番号も別々に管理し、テンプレートを分けて運用することをおすすめします。

取締役会議事録の書き方を整理したい方は、第369条準拠の必須記載項目・電子化のルール・10年保管の実務をまとめた記事もあわせてご覧ください。

参考記事:取締役会議事録の書き方|会社法第369条準拠の記載例・電子化・10年保管ルール

3. 議事録不備のリスク(過料・登記不受理・株主代表訴訟)

株主総会議事録に不備があると、次の3つの場面で具体的なリスクが発生します。

会社法第976条に基づく過料

議事録を作成しなかった場合は会社法第976条第7号、本店に備え置かなかった場合は同条第8号に基づき、100万円以下の過料が科される可能性があります。過料は刑事罰ではなく行政罰ですが、取締役・監査役などの役員等が個人として責任を負う点に注意が必要です。

登記申請の不受理

役員変更・定款変更・剰余金処分など、株主総会決議が登記事項に関わる場合、議事録は商業登記の添付書類になります。記載事項が施行規則第72条の要件を満たしていなかったり、議長名・出席役員名が欠けていたりすると、法務局で補正を求められたり、登記申請が予定どおり進まなかったりする恐れがあります。結果として登記期限を守れなくなるリスクが生じます。

株主代表訴訟・取締役の善管注意義務違反の立証材料の不足

議事録は、取締役が善管注意義務を果たしたかどうかを立証する重要な証拠です。質疑応答での発言要旨や監査役の意見が記録されていないと、後になって「適切な議論を経て決議されたか」を会社側から立証する根拠が弱くなります。

「期限内に作る」「定められた項目を漏らさず書く」「保存期間中きちんと備え置く」という3つを徹底することが、結果的に役員と会社の双方を守ることにつながります。

株主総会議事録の必須記載事項と書面決議の特則

1. 開催日時・場所(バーチャル開催の扱い含む)

議事録の冒頭に、株主総会が開催された日付・開始時刻・終了時刻・場所を記載します。場所については、会場の所在地まで具体的に書きましょう。

たとえばハイブリッド型バーチャル株主総会の場合は、「東京都〇〇区〇〇 〇〇ホテル△△の間およびインターネット中継による」のように、リアル会場と中継方法を併記します。

バーチャルオンリー型を採用する場合は、上場会社が産業競争力強化法上の制度に基づき、経済産業大臣・法務大臣の確認を受けていることなど、制度利用の前提を確認したうえで記載します。

書面決議の場合は、後述する書面決議特有の項目を記載するため、開催日時・場所の記載は不要です。

2. 議事の経過の要領および結果

株主総会で報告・審議された議案と、その結果(決議の成立・否決・継続審議など)を記載します。「経過の要領」とは逐語の発言記録ではなく、議論の流れがわかる程度の要約のことです。

たとえば議題ごとに「報告事項」「決議事項」を区別します。決議事項については「賛成株主の議決権数および割合」「反対株主の議決権数および割合」「棄権の議決権数」を明示します。

決議要件は次の2種類です。普通決議は、定款に別段の定めがない限り「議決権の過半数を有する株主の出席」と「出席株主の議決権の過半数」、特別決議は「議決権の過半数を有する株主の出席」と「出席株主の議決権の3分の2以上」が成立要件です。

定足数と賛成数を議事録で示せることが、決議の有効性を立証する根拠になります。

議事の経過の要旨をどの粒度で書くかは各社の判断です。一般的な議事録の書き方の基本を踏まえつつ、株主総会特有の議決権数の記録を加える形で運用するのが現実的です。

参考記事:議事録の書き方|会議別テンプレートとNG/OK例・8つのコツを解説

3. 議長の氏名

株主総会を主宰した議長の氏名を記載します。多くの会社では代表取締役社長が議長を務めますが、定款で別の役員を議長として定めている場合もあります。

議長は議事の進行と決議の宣言に責任を持つ立場のため、誰が議長であったかは議事録の信頼性に直結する情報です。

4. 出席した取締役・監査役・執行役・会計参与・会計監査人の氏名

その日の株主総会に出席した役員(取締役・監査役・執行役・会計参与・会計監査人)の氏名を全員分記載します。会社法上の役員に該当する立場は、議事録上で出席の事実を明示する必要があります。

欠席役員がいる場合は、欠席者の氏名と欠席である旨を分けて記載しておくと、後から確認しやすくなります。オンラインで出席した役員は、その旨をかっこ書きで明示すると、議事の透明性が高まります。

なお、株主総会では、取締役会のように「出席株主全員の氏名」を記載する必要はありません。出席株主数・議決権数・行使方法ごとの内訳(会場出席・書面投票・電子投票・委任状)を記録するのが一般的です。

5. 議事録作成に係る職務を行なった取締役の氏名

会社法施行規則第72条第3項第6号は、議事録の作成に係る職務を行なった取締役の氏名を記載することを定めています。実務上は議事録作成担当の取締役(多くは代表取締役)の氏名を末尾に記載します。

書面に代えて電磁的記録で作成する場合も同様に、議事録作成担当者の氏名は明示します。

6. 株主総会で述べられた意見・発言の要旨

会社法施行規則第72条第3項第3号では、一定の規定に基づき株主総会で述べられた意見または発言の概要を記載することが定められています。

具体的には、次のような場面の発言です。

  • 株主からの質問と、それに対する取締役・監査役の回答(説明義務)
  • 監査役が報告した監査の方法・結果・株主総会への意見
  • 会計参与・会計監査人が出席した場合の意見表明
  • 累積投票・少数株主提案などに関する説明

発言者の氏名と発言内容の要旨をセットで残します。逐語ではなく要旨でよいものの、後から「誰がどんな意見を述べたか」を再現できる粒度で記録することが重要です。

質疑応答は議事録の中で最も再現性が問われる箇所です。会場で要旨だけメモを取り、後から議事録に書き起こす運用では抜けが出やすくなります。録音と組み合わせて事実関係を残しておくと、議事録の精度が上がります。

7. 書面決議(みなし決議)の場合の特則

会社法第319条は、株主総会の書面決議について定めています。提案された議題について議決権を行使できる株主全員が書面または電磁的方法で同意の意思表示を行なった場合、株主総会の決議があったものとみなされます。これを「書面決議」または「みなし決議」と呼びます。

書面決議の場合は、開催日時・場所などに代えて、会社法施行規則第72条第4項第1号に基づき、議事録に以下の項目を記載します。

  • 株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容
  • その事項の提案をした者の氏名または名称
  • 株主総会の決議があったものとみなされた日
  • 議事録の作成に係る職務を行なった取締役の氏名

全株主の同意を得やすい100%親子会社や中小規模の会社では、書面決議が活用されることがあります。

参照:会社法施行規則 | e-Gov法令検索

株主総会議事録の書き方|決議種別ごとの3つの記載例

1. 定時株主総会(普通決議)の記載例

最も一般的な、定時株主総会で剰余金処分案や取締役選任を決議する場合の議事録です。次のような構成で記載します。

第〇期定時株主総会議事録

1. 開催日時:2026年6月25日(木)10:00〜11:30
2. 開催場所:東京都港区〇〇 当社本社 大会議室
3. 株主の状況:

 議決権を有する株主総数:〇〇名
 その議決権の総数:〇〇個
 出席株主数:〇〇名(うち会場出席〇〇名、委任状による出席〇〇名、書面投票〇〇名、電子投票〇〇名)
 出席株主の議決権の数:〇〇個

4. 出席役員:

 取締役 〇〇〇〇(議長)、〇〇〇〇、〇〇〇〇、〇〇〇〇
 監査役 〇〇〇〇、〇〇〇〇
 会計監査人 〇〇監査法人(代表社員 〇〇〇〇)

5. 議事の経過の要領および結果

定刻、議長は本日の出席株主の議決権の数が定款所定の定足数を満たしていることを確認し、本総会の開会を宣言した。

【報告事項】

第〇期事業年度(自2025年4月1日 至2026年3月31日)事業報告、計算書類および連結計算書類報告の件

議長は事業報告および計算書類の内容を報告し、出席株主の質疑に応答した。
質疑応答の概要は次のとおり。

質問:株主〇〇氏「〇〇事業の今後の見通しについて」
回答:取締役〇〇〇〇「〇〇〇〇」

【第1号議案】剰余金処分の件

議長より、第〇期の剰余金処分案について説明があり、慎重審議の結果、出席株主の議決権の過半数の賛成により、原案どおり承認可決された。

(賛成議決権数:〇〇個/反対議決権数:〇〇個/棄権:〇〇個)

【第2号議案】取締役〇名選任の件

議長より、取締役〇名の選任について説明があり、慎重審議の結果、候補者ごとに採決したところ、各候補者とも出席株主の議決権の過半数の賛成により原案どおり選任された。

以上をもって本日の議事を終了し、議長は11時30分閉会を宣言した。

上記の議事の経過の要領およびその結果を明確にするため、本議事録を作成し、議事録作成者である代表取締役が次に記名する。

2026年6月25日
株式会社〇〇〇〇 第〇期定時株主総会
議事録作成者 代表取締役 〇〇〇〇

2. 特別決議(定款変更・組織再編など)の記載例

定款変更・組織再編・特定の株主からの自己株式取得など、特別決議が必要な議案の記載例です。普通決議との違いは、定足数と賛成要件の表現にあります。

なお、自己株式の取得は取得方法によって必要な決議が変わります。特定の株主からの取得は特別決議ですが、市場取引や公開買付けによる取得、全株主に申込機会を与える取得などは普通決議で足ります。自社の取得方法に応じて、求められる決議要件を確認してください。

第〇回臨時株主総会議事録

1. 開催日時:2026年9月15日(火)14:00〜15:00
2. 開催場所:東京都港区〇〇 当社本社 第1会議室
3. 株主の状況:(普通決議の例と同様の形式で記載)
4. 出席役員:(同上)
5. 議事の経過の要領および結果

【第1号議案】定款一部変更の件

議長より、事業目的の追加に関する定款変更案について説明があり、慎重審議の結果、議決権を有する株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成により、原案どおり承認可決された。

(賛成議決権数:〇〇個/反対議決権数:〇〇個/棄権:〇〇個)

なお、本決議は会社法第309条第2項に基づく特別決議の要件を満たしている。以上をもって本日の議事を終了し、議長は15時閉会を宣言した。

上記の議事の経過の要領およびその結果を明確にするため、本議事録を作成し、議事録作成者である代表取締役が次に記名する。

2026年9月15日
株式会社〇〇〇〇 第〇回臨時株主総会
議事録作成者 代表取締役 〇〇〇〇

特別決議は、定款変更、一定の募集株式の発行、組織再編など、会社法第309条第2項に掲げられた事項が対象です。要件を満たした旨を明示しておくと、後日の登記申請でも参照しやすくなります。

3. 書面決議(みなし決議)の記載例

会社法第319条に基づき、議決権を行使できる株主全員が書面または電磁的方法で同意した場合の記載例です。

株主総会議事録(書面決議)

1. 株主総会の決議があったものとみなされた事項

   〇〇〇〇に関する件(取締役選任、定款変更など)

2. 提案をした者の氏名または名称

   代表取締役 〇〇〇〇

3. 株主総会の決議があったものとみなされた日

   2026年6月8日(議決権を行使できる株主全員からの同意書受領日)

4. 議事録の作成に係る職務を行なった取締役の氏名

   代表取締役 〇〇〇〇

上記の提案について、議決権を行使することができる株主全員から書面により同意の意思表示を行なう旨の通知を受領したため、会社法第319条第1項の規定により、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされた。

2026年6月8日
株式会社〇〇〇〇
議事録作成者 代表取締役 〇〇〇〇

普通決議・特別決議・書面決議は、それぞれ記載すべき項目と表現が異なります。自社の運用ルールに応じて3パターンのテンプレートを用意し、議案の性質に合わせて使い分けることで抜け漏れを防ぎやすくなります。

保存・備置ルール|本店10年・支店写し5年の二段階構造

株主総会議事録は、ほかの議事録と異なり「本店10年・支店写し5年」という二段階の備置義務があります。

1. 本店での10年間の備置義務(会社法第318条第2項)

会社法第318条第2項は、株主総会議事録を「株主総会の日から十年間、その本店に備え置かなければならない」と定めています。

紙で作成した議事録は本店の保管庫に、電磁的記録の場合は本店からアクセス可能なサーバー上に、それぞれ保管します。10年は決して短くない期間です。担当者の異動・退職があっても継続的に管理できる仕組みを整えておくことが重要です。

たとえば、紙のみで運用していると、保管庫の容量・経年劣化・検索性といった課題が発生しやすくなります。電子化と組み合わせることで、検索性と耐久性の両方を高められます。

2. 支店での5年間の写し備置(会社法第318条第3項)

会社法第318条第3項は、支店を設置している会社について次の備置義務を定めています。すなわち、株主総会議事録の写しを「株主総会の日から五年間、その支店に備え置かなければならない」というものです。

ただし、議事録が電磁的記録で作成され、株主・債権者が支店において必要な事項を表示する措置を講じている場合は、支店への写し備置を省略できます。電子化を進めることで、紙の写しを支店ごとに配布・管理する手間を省けるため、支店数が多い会社ほど電子化のメリットが大きくなります。

取締役会議事録(本店のみ10年)と比較すると、株主総会議事録は「本店10年+支店5年」の二段階構造である点が大きな違いです。社内の保管ルールを整備する際には、この二段階構造を明示しておきましょう。

3. 電磁的記録による保管と原本性の確保

電磁的記録で議事録を保管する場合は、原本性の確保が課題になります。具体的には次の3点を満たすことが望ましいとされています。

改ざん防止の仕組み

電子署名やタイムスタンプを付与し、作成後の改ざんが行なわれていないことを技術的に証明できる状態にしておきます。電子署名及び認証業務に関する法律に定められた要件を満たす電子署名であれば、後日の証拠能力が高まります。

長期保存に耐えるファイル形式

10年間アクセスできることを前提に、PDF/Aなどの長期保存向けのファイル形式を選びます。独自形式のファイルは、ソフトウェアが提供終了になると開けなくなる恐れがあります。

バックアップとアクセス制御

サーバーの冗長化と定期バックアップで、データ消失リスクに備えます。同時に、議事録には機密情報が含まれるため、閲覧権限を限定したアクセス制御も必須です。

参照:電子署名及び認証業務に関する法律 | e-Gov法令検索

電子提供制度と議事録運用への影響

電子提供制度は2022年9月に施行され、2023年3月以降に開催される総会から本格運用が始まりました。この制度は株主総会の運営全体に影響を与えており、議事録の運用にも一定の対応が必要です。

1. 電子提供制度の概要(2022年9月施行)

電子提供制度とは、上場会社が株主総会の参考書類・事業報告・計算書類などをインターネット上で電子的に提供する仕組みです。株主総会資料をウェブサイト等で提供し、書面交付請求をした株主には書面を交付する制度として整備されました。

上場会社(振替株式を発行する会社)は、社債、株式等の振替に関する法律第159条の2第1項に基づき、定款で電子提供措置をとる旨を定めることが義務付けられています。電子提供措置の期間は次のように定められています。「総会の3週間前または招集通知発送日のいずれか早い日から、総会の日から3か月を経過する日まで」が措置期間です。

非上場会社は対象外ですが、定款で任意に電子提供制度を採用することができます。

2. 議事録における電子提供措置の記録方法

電子提供制度を採用した会社は、議事録に電子提供措置をどのように行なったかを記録しておきます。具体的には次のような情報です。

  • 電子提供措置を行なったウェブサイトのURL
  • 電子提供措置を開始した日と終了した日
  • 電子提供措置の対象となった書類の一覧

これらは議事録本体に直接記載するというより、議事録の付属書類として整理しておくのが実務的な運用です。

3. 書面交付請求があった場合の議事録上の扱い

電子提供制度のもとでも、株主は会社に対して書面の交付を請求する権利を持っています(書面交付請求権)。書面交付請求があった株主に対しては、株主総会の招集通知に際して書面を交付する必要があります(会社法第325条の5第2項)。

議事録には、書面交付請求があった株主に対して書面交付を行なった事実を別途記録しておきましょう。記録としては、招集通知の発送リストや交付記録の保管で十分です。議事録本体に「書面交付請求があった株主に対し書面の交付を行なった」旨を1行加える運用も一般的に行なわれています。

電子提供制度は施行から年数が浅く、各社の運用ルールがまだ標準化されていない領域です。法務局や監査法人と連携しながら、自社の状況に合わせて議事録の記録方法を整えていくことが現実的です。

機密性の高い株主総会議事録を効率的に作成する3つの工夫

実務でもう1つ大きな悩みになるのが「作成負荷の重さ」です。株主総会は議案が多く、質疑応答の発言要旨も詳細に残す必要があるため、議事録作成だけで数日かかることもあります。

1. 議案ごとの記載テンプレートを事前に準備する

総会前に、議案ごとの議事録テンプレート(議案名・決議要件・想定される質疑応答)を準備しておくと、議事録作成の負担が大きく下がります。

たとえば「第1号議案:剰余金処分の件 → 普通決議(過半数)/賛成議決権数〇〇/反対議決権数〇〇」という枠を埋めるだけのテンプレートを用意しておきます。これにより、会議中の記録は質疑応答と発言要旨のメモだけで済むようになります。

事前準備をせずに当日を迎えると、議論を追いながら構成を考えることになり、議事録担当者は議論への参加が浅くなりがちです。事前に骨格を固めておくことで、当日は議論への対応に集中できる状態をつくれます。

担当者の異動や退職があると、過去の議事録の体裁を真似るだけになって標準化が崩れることがあります。テンプレートを社内文書として整備しておくことが、属人化解消の第一歩です。

2. 録音と文字起こしで質疑応答の要旨を正確に残す

株主総会の質疑応答は、議事録のなかで最も再現性が問われる部分です。録音と文字起こしを併用することで、事実確認をスムーズに行なえます。「あの質問は誰がしたか」「条件付きの賛成だったのか無条件だったのか」といった点も後から確認できます。

会議終了後にメモと録音を突き合わせることで、議事の経過の要旨を正確に再現できます。記憶が薄れる前に整理することで、議事録の精度も上がります。

なお、AIで誰の発言かを自動で振り分ける話者分離には特性があります。議長や登壇者など発言者がはっきり分かれる場面では、精度高く分離できる傾向があります。一方で、複数人が間髪を入れずに被せて話すディスカッション型の場面では、精度が落ちやすい点に留意が必要です。

質疑応答の要旨を正確に残すには、発言の切れ目を意識した進行を心がけ、後からの確認を前提にすると安全です。なお話者分離は最大20名程度まで精度を担保できる設計のため、出席者の多い総会でも実用的に活用できます。

会場で議事録担当者がメモに集中していると、議長の進行サポートや想定問答の参照といった本来の役割に手が回らなくなることもあります。録音を残す前提に切り替えれば、当日は対応に集中し、要旨の整理は後工程で行なうという分業が可能になります。

3. 機密性に配慮したAI議事録ツールを活用する

近年は、機密性の高い会議でも安心して使えるAI議事録ツールが登場しています。会議の音声をAIが自動で文字起こしし、要点を整理してくれる仕組みです。

株主総会で活用するうえで重要なのは、機密管理と話者識別の2点です。

機密管理については、入力した音声をAI側の学習に使わない設計になっているかを確認しましょう。学習に使われると、株主の質問内容や非公開情報が他社の生成結果に紛れ込むリスクがあります。各社の独自アルゴリズムやデータ取り扱いポリシーを必ず確認してください。

話者識別については、複数の株主と複数の役員が発言する場面で、誰の発言かを自動で整理してくれるかが重要です。出席者が多い株主総会では、後から「株主からの質問」「取締役の回答」「監査役の意見」を抜き出す作業が大幅に楽になります。

機密性の高い会議でAI議事録ツールを活用した事例として、株式会社大和バルブのケースが参考になります。同社では機密性の高い役員会の議事録を役員自ら作成していました。外部委託では情報漏えいリスクがある一方、役員の作成負荷が大きいというジレンマを抱えていたとのことです。Otolio導入後は議事録作成時間が50%削減され、内製のまま運用効率を高められたとのことです。

参考記事:機密性の高い役員会の議事録作成時間を50%削減。Otolioで情報の可視化を強化する

Otolioは、特許取得済の独自アルゴリズムでお客様の音声をAIに学習させずに精度を高める設計です。話者分離は最大20名まで対応しているため、株主・役員が多人数で発言する株主総会の場面でも実用的に使えます。

導入前にはトライアルで自社の会議音声を試し、文字起こし精度と運用フィット感を確認することをおすすめします。

まとめ|会社法第318条準拠の株主総会議事録運用へ

ここまで、株主総会議事録の法的位置付け・必須記載7項目・決議種別ごとの記載例を解説しました。さらに本店10年と支店写し5年の保存ルール・電子提供制度への影響、そして機密性の高い総会を効率化する工夫まで取り上げました。

ポイントは次の3つです。まず、株主総会は会社の最高意思決定機関であり、議事録は施行規則第72条の要件を満たした法定文書として作成・保管する必要があるということ。次に、取締役会議事録と異なり「本店10年・支店写し5年」という二段階の備置義務があり、電子化を活用することで管理負担を下げられること。最後に、電子提供制度の施行で運用が変化しつつある今こそ、テンプレートとツールを整備して内製で効率化できる仕組みを作る好機であるということです。

法令準拠と実務効率は、対立する要素ではなく両立できます。記載要件をテンプレートに落とし込み、運用を標準化することで、担当者の負荷を下げながら登記・株主対応のリスクも回避できます。ぜひ、自社の株主総会議事録の運用を見直してみてはいかがでしょうか。

体裁を整え終えても、最後にもう一つ判断が残ります。それは「総会当日の音声を、どこまで再現できる状態で残すか」です。会社法上の必須項目は人が確認すべきですが、文字起こしと話者の整理という反復作業は機械が得意とする領域です。一度試してみると、書類の正確性と担当者の負担のバランスがどこまで変わるかが具体的にわかります。

条文準拠と作成効率を、自社の総会運用で両立させるために

ここまで読み進めた方は、株主総会議事録に必要な要件と書き方をすでに整理できている状態です。残るのは「当日の発言を、誰の発言かまで含めて10年残せる仕組みを試すかどうか」だけかもしれません。Otolioなら、機密性の高い質疑応答もAIに学習させずに高精度で文字起こしでき、最大20名の話者分離で発言者の整理まで自動化できます。

この記事を書いた人
エピックベース株式会社|マーケティング部|青木喬平

2023年にエピックベースに入社し、累計利用社数8,000以上「Otolio」のマーケティングを担当。 本ブログでは、議事録・文字起こし・生成AI・AIエージェントに関するノウハウや、企業が業務効率化の実現・DXの推進に必要な情報を現場のリアルな視点からお届けしています。 ※ 本ブログはOtolio運営元であるエピックベース株式会社の社員が執筆・編集しています。

よくある質問とその回答

Q. 株主総会議事録に署名・押印は必須ですか?

会社法上、株主総会議事録への署名・押印は要件とされていません。これは取締役会議事録(出席取締役・監査役の署名または記名押印が必要)との大きな違いです。ただし、実務上は議事録作成者である代表取締役が記名するケースが一般的です。登記申請で添付する場合は、法務局の運用に応じて代表者印を押印することもあります。

Q. 株主総会議事録の本店10年・支店5年の起算日はいつですか?

会社法第318条第2項・第3項は、いずれも「株主総会の日から」起算すると定めています。書面決議の場合、会社法第319条第1項により決議があったものとみなされた日が、同条第2項の書面・電磁的記録の本店備置期間の起算日になります。担当者が異動しても起算日の管理が崩れないよう、議事録の冒頭に保存期限を明記する運用もおすすめです。

Q. 株主総会議事録と取締役会議事録のテンプレートは共通でもよいですか?

おすすめしません。根拠条文(318条vs369条)・記載事項(施行規則72条vs101条)・署名押印の要否・保存期間が全て異なります。テンプレート・運用フロー・保管ルールを分けて管理することで、法定要件の取りこぼしを防ぎやすくなります。取締役会議事録の運用を整理したい方は、第369条準拠の必須記載項目をまとめた記事をご覧ください。

参考記事:取締役会議事録の書き方|会社法第369条準拠の記載例・電子化・10年保管ルール

Q. 電子提供制度を採用した場合、議事録の電子化は必須ですか?

電子提供制度の採用と議事録の電子化は別の論点で、必須ではありません。電子提供制度は招集通知・参考書類などを株主に提供する方法に関する制度です。議事録自体の作成形式(紙か電子か)には直接的な規制はありません。ただし運用の一貫性を考えると、電子提供制度を採用する会社は議事録も電子化したほうが管理しやすくなります。

Q. AI議事録ツールを使えば、議事録の法的要件は自動で満たされますか?

いいえ。AI議事録ツールはあくまで議事録作成を支援する仕組みです。会社法第318条や施行規則第72条の要件充足を代替するものではありません。記載項目の網羅・出席役員氏名の正確性・決議要件の判定は、必ず担当者が確認する必要があります。AI議事録ツールは、文字起こしと話者整理を機械化することで、人が要件確認に集中できる状態をつくる手段としてご活用ください。

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