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業務プロセス改善の手法と進め方|ECRSで流れのムダを見つける6ステップ

会議の記録や報告書づくりに時間を取られ、本来の仕事が後回しになることがあります。そんな状態を変えようと、業務プロセスの改善に取り組む企業が増えています。工程のムダを削り、コストを抑え、品質を安定させるための取り組みです。

ただ、いざ着手しようとすると、

  • 業務を図にしてみたものの、どこがムダなのか判断できない
  • 手法の名前は並んでいるが、自社にどれを当てればいいのか決められない
  • 以前も取り組んだのに、いつの間にか元のやり方に戻っていた

といった壁に突き当たる方も少なくありません。

そのためこの記事では、業務の流れのムダを見つける型、改善の大きさと道具の選び方、目的の設定から定着までの6ステップを、改善の前と後を並べた例とあわせて解説しています。「図にしたあと、どこを削ればいいのかわからない」とお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。

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目次

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業務プロセス改善とは?流れのムダを取り除くこと

業務プロセス改善とは、業務の目的を踏まえて作業の内容や順序、担当者間の受け渡しなどを見直し、効率や品質を高める取り組みです。業務の流れを図にして可視化し、ECRSでムダを見つける方法などが役立ちます。

進め方は、目的と範囲の決定、現状の可視化、原因の特定、改善策の設計、試行と測定、標準化の6ステップに分かれます。改善を定着させるには、現場への変更負担を考慮しながら、必要な手順や運用ルールを整えることが大切です。

ここで混ざりやすいのが「業務プロセス」と「業務フロー」です。業務プロセスは、成果が出るまでの作業・担当・順序をまとめた全体を指します。業務フローは、その流れを図で表したものです。つまり業務フローは、業務プロセスを目で見える形にする道具にあたります。

個々の作業を効率化する方法は、業務効率化の打ち手の整理で詳しく紹介しています。この記事では、個々の作業だけでなく、工程の順序や部門間の受け渡しを含めた業務全体の流れに注目します。

改善の前と後で、流れはどう変わる?

改善によって変わるのは、工程の数や順番だけではありません。手作業を自動化し、複数の作業をまとめることで、担当者の負担も減らせます。会議の記録を全社に共有するまでの流れを例に、改善前後を比較します。

工程 改善前 改善後 何を変えたか
会議中 進行を手伝いながらメモを取る 記録は自動で残り、進行に集中する 手作業をなくした
会議の直後 録音を巻き戻しながら文字にする 文字起こしと要点がそろった状態から始める 2つの工程をまとめた
体裁を整える 雛形に合わせて一から書き直す 決めた書式で出たものに手を入れる 作業を簡単にした
上長の確認 全文を書き上げてから渡す 要点が出た時点で論点だけ先に確認する 順番を変えた
共有・保管 今までの共有先とフォルダ 今までの共有先とフォルダ 変えない

右端の列を見てください。改善内容は、工程をなくす、まとめる、簡単にする、順番を変えるという4つに整理できます。これが、このあと扱うECRSの考え方です。

最後の行だけ「変えない」と書きました。共有先や保管場所を維持することは、現場への変更負担を抑える一つの方法です。複数の運用を同時に変更する場合は、新しい手順の教育やサポートも必要になるため、変更範囲を慎重に検討しましょう。

改善で得られる効果は2種類

改善の効果は、数字で示せるものと、数字にしにくいものに分かれます。社内で合意を取るときは、両方を用意しておくと話が進みます。

数字で示せる代表例が、コスト削減と生産性向上です。二重入力や不要な承認を取り除くことで、処理にかかる工数や運用負荷を減らせます。人件費などのコスト削減につながるかは、削減した工数の活用方法や人員配置によって異なります。

同じ人数でより多くの案件を処理できるようになれば、生産性の向上につながります。受注機会の増加やコストの削減につながれば、売上や利益率の改善も期待できます。改善前後の処理時間、エラー件数、リードタイムの3つを記録しておくと、効果を報告するための材料がそろいます。

数字だけでは捉えにくい効果もあります。業務の流れや担当者の役割を整理することで、各作業の目的が明確になり、担当者が仕事の意義を理解しやすくなることです。

業務の流れのムダを見つける3つの型

業務プロセス改善には複数の手法があり、名前を知るだけでは自社に合うものを選びにくいものです。整理すると3つの層に分かれ、決める順番も決まっています。

層 決めること 具体
① ムダを見つける型 どの目で見ればムダが見つかるか ECRS、業務フロー図、「なぜ」を5回
② 改善の大きさ 今の流れを直すのか、作り替えるのか 小さな改善、BPR
③ 道具 何に置き換えるか ワークフローシステム、RPA、AI

①から順に決めます。先に道具を選ぶと、ムダをそのまま高速で繰り返す仕組みができあがるためです。まずは①の3つの型を見ていきます。

ECRSの4つの目でムダを見つける

ECRSは、工程をひとつずつ4つの目で点検する型です。排除(Eliminate)・結合(Combine)・入れ替え(Rearrange)・簡素化(Simplify)の頭文字を取っています。

目 自分に問う言葉 会議の記録での例
排除 この工程、なくせないか 手作業で全文を書き起こす工程をなくし、発言の記録は自動で残す
結合 ほかの工程とまとめられないか 文字起こしと要点の抽出を1つの工程にする
入れ替え 順番や担当を変えられないか 完成を待たず、要点の段階で先に確認をもらう
簡素化 もっと簡単にできないか 書式を1つに決め、毎回の判断をなくす

順番にも意味があります。排除から始めるのは、なくせる工程を残したまま結合や簡素化をしても、ムダが形を変えて残るからです。「この作業は誰が何に使っているのか」を先に確かめ、答えられない工程があればそこが最初の候補になります。

ムダを取り除く考え方を重視する代表例に、トヨタ生産方式があります。必要なものを必要なときに必要な量だけ流す考え方と、異常があれば工程を止めて不良を後ろへ送らない仕組みが柱になっています。ムダの排除を軸にしたLean(リーン)も、この流れをくむ考え方です。

参照:トヨタ生産方式 | 経営理念 | 企業情報 | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

業務フロー図で工程と受け渡しを描く

ECRSを当てるには、点検する対象が目の前に並んでいる必要があります。そこで先に描くのが業務フロー図です。

描き方は複雑でなくて構いません。紙でも表計算ソフトでも、横一列に工程を並べ、工程と工程の間に「誰から誰へ、何が渡るか」を書き込めば十分です。BPMN(Business Process Model and Notation)のような記法もあります。ただし、最初の1枚に厳密さは要りません。

工程そのものだけでなく、工程間の受け渡しにも注目してください。承認待ちや、前の担当者からファイルが届くまでの待ち時間が、業務の滞りにつながる場合があります。ここに印をつけていくと、ECRSの「排除」「入れ替え」を当てる場所が見えてきます。

システムに残らない工程を拾えるかどうかも、図の精度を左右します。例えば、営業担当者が顧客対応のために個別のExcelを管理していたり、会議の前に担当者が毎回資料を集めていたりするケースがあります。こうした作業は、マニュアルや台帳に記載されていない場合があります。担当者に聞いて初めて図に乗ります。

5 Whysで根本原因を探る

ムダが見つかったら、そこで手を打つ前に原因まで下ります。表面の現象を直しても、別の場所で同じ不具合が再発するためです。

5 Whysは、「なぜ」を繰り返して問題の根本原因を探る手法です。5回は目安であり、原因に応じて回数は変わります。例えば、請求書の発行が遅い原因を調べると、担当者の業務負荷が高く、その背景に3段階の承認フローがあると分かるかもしれません。さらに、承認が増えた理由や金額ミスが発生した原因を調べることで、見直すべき工程や仕組みを特定していきます。

原因の候補が複数絡んでいるときは、フィッシュボーンダイアグラム(特性要因図)を使います。人・方法・設備・情報に分けて並べると整理しやすくなります。どちらの型を使うにせよ、ゴールは同じです。「請求書の発行が遅い」の裏に「システム間が連携していない」があるなら、直すのは後者です。

改善の大きさと道具を選ぶ

ムダと原因が見えたら、次はどれくらいの規模で直すかを決め、そのあとに道具を選びます。この順番を逆にすると、ツールの機能に業務を合わせる形になり、現場が動きません。

小さな改善とBPR、どちらを選ぶ?

改善の経験が社内に少ないうちは、小さな改善(クイックウィン)から入ります。今の流れを前提に一部の工程を直すやり方です。もう一方のBPR(Business Process Reengineering)は、業務の目的からゼロで設計し直します。

小さな改善(クイックウィン) BPR
手をつける範囲 工程の一部 業務の目的から設計し直す
期間の目安 数週間から数か月 案件の規模・範囲による
必要な決裁 部門内で完結しやすい 経営層の関与が前提
リスク 小さい 大きい(投資・組織体制に及ぶ)
向いている場面 改善の経験が社内に少ない 今の流れのままでは目標に届かない

小さな改善から入る狙いは、効果の大きさより成功体験を社内に残すことです。例えば、承認工程を1つ減らす、書式を統一する、会議の時間を短縮するといった方法があります。短期間で結果が見える改善を経験すると、次の取り組みへの協力も得やすくなります。

BPRを選ぶのは、工程を削っても目標に届かないと分かったときです。例えば、製造業でサプライチェーン全体を組み替えたり、金融業で紙の手続きを全面的にデジタル化したりする取り組みが挙げられます。こうした改革は従業員の役割や組織体制にまで及ぶため、経営改革に近い性質を持ちます。着手するなら、経営層の関与を前提に計画を立ててください。

ITツール・自動化で置き換える

業務改善のツールは最後に選びます。代表的なのがRPA(Robotic Process Automation)とワークフローシステム、そしてAIです。RPAは請求書処理やデータ入力といった定型作業を肩代わりし、ワークフローシステムは承認や依頼の流れをデジタルに乗せます。

例えば、不要な承認工程が残ったままワークフローシステムを導入すると、承認の操作は簡単になっても、承認待ちそのものは解消しません。自動化する前に、工程の必要性や順序を見直すことが大切です。

うまく回れば、工数削減以外の効果も付いてきます。例えば、入力ミスの減少や記録の統一、ノウハウの蓄積といった効果が考えられます。こうした変化は、担当者による品質のばらつきを抑えることにもつながります。

自社に合うツールを探している段階なら、目的別に18のツールを比較した記事で絞り込みの基準を確認できます。導入がうまくいかない典型的なパターンまで整理しています。

業務改善の進め方6ステップ

業務プロセス改善は、6つのステップに分けて進めると整理しやすくなります。目的と範囲の決定、現状の可視化、ムダと原因の特定、改善策の設計、試行と効果測定、標準化と定着の順に進めます。

前半の3つで「どこを直すか」を決め、後半の3つで「どう直して、どう残すか」を決めます。原因を特定できても、改善策の実行や定着まで進まなければ、十分な効果は得られません。後半のステップでは、施策の試行と効果測定、運用への定着を意識して進めましょう。

STEP 1|目的・範囲と着手する業務を決める

最初に決めるのは、何のための改善かです。例えば、コスト削減、品質の安定、意思決定の迅速化などが目的として考えられます。目的が曖昧なまま進むと、施策の選び方も評価の基準もぶれます。目標はSMARTの観点(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限付き)で書いておくと、後の判断が楽になります。

範囲の区切り方には注意が必要です。広げすぎればリソースが分散しますが、狭く区切りすぎると改善効果が限定されます。試行段階では一部の会議から始める方法も有効ですが、本格運用では同じ手順を適用できる業務の範囲も考えましょう。業務ごとに異なる手順が増えると、かえって現場の負担になる場合があります。

どの業務から着手するかは、次の4つの軸で並べます。

  1. 効果の大きさ:コスト削減や生産性向上のインパクトはどれくらいか
  2. 実現しやすさ:必要なリソース・時間・関係者の数はどれくらいか。小さく始められるか
  3. 成果の見えやすさ:短期間で効果を実感できるか
  4. 横への広げやすさ:うまくいったとき、他部署や他業務に展開できるか

後ろの2つは軽く見られがちです。効果が大きくても半年後にしか結果が出ない施策から始めると、その間に社内の関心が薄れていきます。小さくても数週間で成果が見える施策から始めれば、次の改善への推進力が生まれます。短期間で成果を示せるかどうかは、取り組みを継続するうえで大切なポイントです。

従業員の不満や定着率に影響する課題も、優先度を上げてください。非効率な承認が日常の不満を生み、離職につながっているなら、その改善は数字以上の価値を持ちます。

最後に、経営層の意向と現場の期待をすり合わせておきます。この最初の合意が、後半を支えます。

STEP 2|現状の業務フローを図にする

着手する業務が決まったら、今の流れを1枚の図にします。業務フロー図の出番です。工程を横に並べ、つなぎ目に「誰から誰へ、何が渡るか」を書き込んでいきます。

図の材料は、資料だけでは足りません。現場で実際に行われている非公式な手順も、暗黙のルールになっているやり方も、この図の対象に入ります。そこで担当者へのヒアリングと観察を組み合わせてください。

ヒアリングは質問の立て方で答えの質が変わります。「困っていることはありますか」より「先週、最も時間がかかった作業は何ですか」のほうが、具体的な答えが返ります。抽象的な問いには抽象的な答えしか返ってきません。

観察も効きます。本人すら気づいていない動作や、部門間で情報が途切れている箇所は、外から見て初めて表に出ます。「慣れ」で見過ごされている非効率は、聞くだけでは出てきません。

STEP 3|ムダと根本原因を特定する

図ができたら、工程をひとつずつECRSの4つの目で点検します。排除から順に当てるのが基本です。これだけで、手をつける候補はかなり絞れます。

あわせて数字でも裏を取りましょう。工程ごとの処理時間、エラー率、リードタイム、コスト構造を集計すると、どこに時間やコストが偏っているかが見えてきます。データがERP(基幹業務システム)やCRM(顧客関係管理システム)にたまっている場合もあります。抽出の設定が整っていれば、集計の一部は自動化できるでしょう。

平均値だけを見ていると取りこぼします。分布や外れ値を確認すると、特定の条件でだけ起きる問題が顔を出します。例えば、月末だけ処理時間が大幅に長くなる工程では、繁忙期特有の問題が発生している可能性があります。

候補が出そろったら、5 Whysで「なぜ」を繰り返し、原因を掘り下げます。ここで根本原因を適切に特定できるかどうかが、改善の成否を大きく左右します。時間をかけて確認する価値のある工程です。

STEP 4|目標と現場の負担を踏まえて改善策を設計する

改善策を設計するときは、目標とする業務の姿を描くだけでなく、現場で実現できるかどうかも確認します。業務全体を見直す場合も、既存の工程を部分的に改善する場合も、変更の目的と現場への負担を整理することが大切です。

ところが、企業の業務には長年積み上がった配布ルート・保管場所・承認フローがあります。例えば、「議事録はWordで課長承認、PDF化して全社共有」「報告書は法務レビュー後に印刷保管」といった組織固有の運用があります。

理想の業務フローを実現しようとして、配布ルートや保管場所まで一度に変更すると、現場が覚え直す手順が増え、負担が大きくなる場合があります。

現場への変更負担を抑えるには、既存の運用で維持できる部分を確認する方法があります。設計の段階で、次の3点を点検してください。

  1. 共有先:今までの共有相手・共有方法をそのまま使えるか
  2. 保管場所:今までのフォルダ・システムに保存できるか
  3. 成果物の形式:今までのファイル形式(Word、PDF、Excelなど)で出せるか

共有先・保管場所・成果物の形式を維持できれば、現場が覚え直す手順を減らせます。一方で、改善の目的によっては、これらの変更が必要になることもあります。その場合は、変更する範囲と移行手順を整理し、現場への負担を抑えながら進めましょう。

複数の案を比べるときは、ROI(投資対効果)だけで決めないでください。実現可能性、リスク、法令・セキュリティ要件、現場に求める変更の負担という4つの観点で比較すると、改善策の優先順位を判断しやすくなります。

新しい仕組みを検討するときは、機能の充実度だけでなく、既存の共有先や保管場所、成果物の形式に対応できるかも確認しましょう。今までの運用と連携しやすい仕組みを選ぶことで、導入時の負担を抑えやすくなります。

STEP 5|小さく試して効果を測る

設計ができたら、いきなり全体に広げず、決めた範囲で試します。このとき必要なのが、着手前の数字です。処理にかかっていた時間、月あたりの件数、差し戻しの回数などを事前に記録しておきましょう。改善前のデータがなければ、後から効果を比較することが難しくなります。

実行の段階では、現場からの抵抗や想定外の問題が起こることがあります。単なる慣れの問題なのか、改善策や運用方法に見直しが必要なのかを確認しましょう。定期的に状況を確認する場を設け、必要に応じて軌道修正できるようにしておきます。

同時に進めたいのが、教育とサポートです。とくに効くのは、関わるメンバーが「自分たちの意見が反映されている」と感じられる仕組みです。ヒアリングした内容がどう設計に反映されたかを共有するだけでも、受け止め方は変わります。

STEP 6|標準化して定着させる

試した結果が良ければ、次はそれを標準にします。やり方を文書に残し、誰が担当しても同じ手順で進められる状態を目指します。標準化を行わないと、担当者の異動などをきっかけに、改善後の運用が維持できなくなるおそれがあります。

標準化する際は、手順に加えて、例外が起きたときの判断基準、問い合わせ先、文書の更新担当者も決めておきましょう。これらが決まっていないと、運用の変更が文書に反映されず、次第に実態と合わなくなるおそれがあります。

評価も忘れずに行います。KPI(重要業績評価指標)を基準に改善前後を比べ、STEP 1で決めた目標にどこまで届いたかを確認してください。そのうえで、成功事例を他部署に共有し、次の改善につなげる流れを作ります。

標準として残す方法は、業務標準化の進め方とメリット・デメリットで詳しく扱っています。誰が担当しても一定の品質を保てる状態をどう作るかを解説しました。

成功事例から学ぶ業務プロセス改善

手法を理解しても、自社に当てはめる段になると迷うことがあります。ここでは、製造業やサービス業での取り組みと、複数部門に共通する会議業務の改善事例を紹介します。

製造業はデータ整理とAI分析で改善対象を見つける

製造業の業務プロセス改善では、現場のデータを分析できる状態に整えることも有効です。ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングは、装置ごとに異なるデータの表記や単位を統一し、前処理のルールを整えました。AI分析に使うデータの整理から取り組んだ事例です。

同社は、半導体の後工程でAI分析ツール「Prediction One」を使い、不良率と歩留まりの予測モデルを構築しました。それまで独自に作っていた予測モデルの決定係数は0.19でしたが、Prediction Oneでは0.64まで改善しています。分析結果から改善対象となる工程を判断するためのヒントも得られており、今後の製造プロセス改善に活用する方針です。

参照:スマートファクトリー最前線~半導体製造プロセス改革への取り組み~|AI予測分析ツール「Prediction One」導入事例

サービス業は顧客対応と現場業務を効率化する

サービス業では、顧客を待たせている時間が改善の対象になります。KDDIは、LINE「auサポート」のチャットボットに生成AIを使い始めました。2024年3月7日のニュースリリースで発表した取り組みです。顧客の入力内容をAIが要約し、情報が不足している場合には再質問する仕組みです。事前の検証では、今までのチャットボットと比べて、問い合わせの解決までにかかる時間を約5分(約2割)短縮できた事例が確認されています。短縮される時間は問い合わせの内容によって変わる、とも注記されています。

参照:au、チャットボット問い合わせ対応に生成AIを活用開始 | KDDI ニュースルーム

星野リゾートは、都市観光ホテルブランド「OMO」の自動チェックイン機を、外部の開発会社と社内エンジニアが協働する体制で開発しました。予約システム・会計システム・ホテルシステムをつなぎ、施設ごとに異なるスマートキーとも連携させています。開発期間は3ヶ月で、2021年4〜5月に3施設を同時開業しました。社内エンジニアがタスクの細分化や進捗の可視化にも携わり、短期間での開発を支えました。

参照:3施設同時開業!でも開発期間は3ヶ月。内製化の底力で爆速開発をしたお話|星野リゾート情報システムグループ

すかいらーくホールディングスも、業務のデジタル化を進めています。主要ブランド全店へのデジタルメニューブックの導入、客数予測にもとづく人員配置表の自動作成、配膳ロボットの配置などに取り組んでいます。

参照:DX(デジタルトランスフォーメーション) | 環境 | サステナビリティ | すかいらーくホールディングス

3社の取り組みには、顧客の利便性向上と現場の業務効率化を目指しているという共通点があります。顧客対応の時間短縮や作業負荷の軽減など、施策に応じた指標で効果を確認することが大切です。

会議の記録から始めた業務プロセス改善

もうひとつ、どの部署にもある業務から着手した例を紹介します。医療・介護・福祉領域で事業を展開する株式会社CBホールディングスの取り組みです。

同社の人事総務部総務課は、グループ全体の経営会議の準備と議事録作成を担当していました。会議は毎月1回、時間は3〜4時間、長いときは5時間を超えます。5社分の経営戦略や進捗を扱うため、議事録は「話したことをすべて書く」のが原則で、多いときは52ページに及びました。

作成は3名で分担し、最後に責任者がチェックする体制です。それでようやく、会議後2営業日で初稿、2週間で全社展開という運用を保っていました。会議中は資料共有の操作があってメモを取れず、終了後に録音を聞き直しながら文字にする作業が発生していました。この工程が負担の中心でした。

同社は、記録づくりを人手で埋める道を選びませんでした。ツールの導入を、業務フロー全体を見直す契機として位置づけました。録音から文字起こし、議事録の作成、共有までを1つの流れにまとめる方向です。重視した点は2つありました。要点だけ知りたい人と詳細を確認したい人の両方に応えられることと、発言の記録が証跡として残ることです。

変化は明確でした。分担していた担当者が抜け、工数の逼迫が懸念されていたところ、実際には1人で初稿を完成させられるようになりました。2.5人がかりだった作業が1人に収まり、初稿提出の期日は変えないまま負荷だけが下がりました。同社は次の段階として、議事録そのものをシンプルにし、作成・確認・共有の手間をさらに減らす運用の見直しを進めています。

CBホールディングスの事例が示しているのは、着手する業務の選び方です。会議とその記録は、部署や職種を問わず発生します。改善の効果が特定部門に閉じないため、成功体験を横に広げやすいという特徴があります。

参考記事:「Otolio」を業務DXのきっかけに。負荷軽減だけでなく、効率的な業務フローづくりをめざして導入

改善を定着させる仕組み

施策を導入したところで、改善はまだ終わっていません。日々の業務に埋もれて忘れられれば、効果は一過性で終わります。ここでは、元に戻る原因から、社内での伝え方、効果の測り方、広げ方までを順に見ていきます。

改善はなぜ元に戻るのか?

改善後の運用が元に戻る原因の一つに、現場が覚え直さなければならない手順やルールの多さがあります。改善案の内容だけでなく、変更に伴う負担や教育・サポートの体制も定着に影響します。

Otolioが実施した250件以上の導入企業アンケートでも、最も多かったのは記録や報告の作成に関する声でした。作成が本業を押しのけ、会議の数に追いつかない、という内容です。困りごとは「記録を作る手間」であって、「共有の仕方」ではありません。手をつける場所を取り違えると、現場の負担だけが増えます。

もう一点、定着を分けるのが操作の少なさです。同アンケートでも現場ヒアリングでも、この点は繰り返し語られました。設定や保存場所を意識せずに使えるかどうかが、使い続けられるかの分かれ目になります。

社内でツールを検討している担当者がどこでつまずきやすいかは、検討段階で効いてくる5つの判断軸にまとめました。操作の負担、権限の設計、既存ツールとの兼ね合いなど、導入後に効いてくる論点を整理しています。

現場・管理職・経営層で響く言葉が違う

同じ改善策でも、立場が変わると刺さる言葉は変わります。全階層に同じ説明をすると、それぞれが重視するメリットが伝わりません。商談や導入後のヒアリングで繰り返し確認されるのは、次のような構造です。

階層 響く言葉 響きにくい言葉
現場(実務担当者) 自分の作業がどれだけ減るか・手順がどれだけ簡単になるか 経営戦略・全社最適(自分の仕事と結びつかない)
管理職・マネージャー 品質のばらつきが減る・属人化が解消する・部下の負荷が下がる 機能の多さ(それより運用の楽さが気になる)
経営層・決裁者 投資対効果・蓄積される情報の資産価値・統制とリスクの低減 個別業務の時短(判断のスケールに合わない)

とくにつまずきやすいのが経営層への説明です。現場の時短メリットだけで稟議を出しても、決裁ラインを越えられない場面が多く見られます。投資額や社内規程によっては、役員・社長など経営層の決裁が必要になる場合もあります。その際は、費用対効果や組織全体への影響を説明できるようにしておくことが大切です。

ここで効くのが、「何分減るか」ではなく「何が組織に残るか」という語り口です。改善によって業務の記録が整い、後から検索・分析できる形で蓄積されるという見通しを示すと、経営層の関心と結びつきやすくなります。

推進担当者が孤立しがちなのは、この翻訳を1人で背負うからです。現場向け、管理職向け、経営層向けに、同じ施策をそれぞれの関心に合わせた言葉で説明できるようにしておきましょう。各階層が重視するメリットを伝えやすくなり、社内の合意形成にも役立ちます。

現場でITツールが根付かない構造は、業種をまたいで似た形で現れます。営業・建設・製造に共通する5つの構造もあわせてご覧ください。

効果を測る仕組みは着手前に決める

改善後の効果を具体的に説明できないと、次の投資について社内の合意を得ることが難しくなります。原因の一つは、改善前の状態を記録しておらず、効果を比較できないことです。

指標が時間短縮だけに寄るのも危ない兆候です。作成時間が半分になっても、品質が落ちて確認工数が増えていれば、組織全体では改善していません。時間・品質・関係者の負荷という3点をセットで確認すると、実態に近い評価ができます。

測った結果は、日常の業務のなかで見られる形にしておきます。ダッシュボードやレポートで進捗が見えれば、現場の担当者も改善の状況を意識し続けられます。あわせて、うまくいっていない兆候を早めにつかむ経路も用意してください。改善が滞るサインは、小さな不満や現場の一言として先に現れます。

計画・実行・評価・改善をくり返すPDCAを効果的に進めるには、取り組みの結果を確認できる仕組みが欠かせません。指標を設定して改善前後を比較すると、次に何を見直すべきか判断しやすくなります。

小さく試した結果を全社へ広げる

全社展開を一気に進めようとすると、かえって時間がかかります。大企業では、セキュリティ審査、既存システムとの連携確認、全社ルールの策定が並行して走るためです。そのぶん、検討期間が長引く場合があります。

かといって、検証の範囲を細かく分けすぎると、段階ごとに稟議と評価をやり直すことになります。そもそも1人だけの検証では判断材料がそろいません。分かるのは、その人の担当業務で成立したという事実だけです。

業務のやり方は人によって異なるため、大きく時間を短縮できる人もいれば、ほとんど変わらない人もいます。こうした差は、複数名が実際に試すことで確認できます。

実際にスムーズに進む組織は、次の2段階を踏んでいます。

  1. 複数名で同時に試す:業務のやり方が違う人を混ぜる。アカウントを配るだけで終わらせず、それぞれが自分の担当業務で実際に使う期間をつくる
  2. 全社に広げる:トライアルの実績を稟議材料にして、全社展開と既存システムとの連携を本格的に整える

トライアルでは、参加人数だけでなく、業務のやり方が異なる人を含めることが大切です。複数の運用パターンで試すと、どの業務で効果が出やすく、どの業務で工夫が必要なのかを導入前に確認できます。各自の運用ルールと効果も並行して集めておくと、稟議に必要な材料がトライアル期間中にそろいます。

広げる段階でもうひとつ効いてくるのが、失敗の扱い方です。改善は試行錯誤が前提で、うまくいかない施策はどうしても出ます。それを責める空気があると、次の提案は出てきません。うまくいかなかった理由を記録して全社で共有する組織のほうが、結果として改善の回転は速くなります。改善提案を出した社員やチームを表彰する制度も、同じ方向に効く仕掛けでしょう。

他社がどの段階でどんな成果を出したかは、業務効率化の成功事例|施策別の課題・打ち手・効果と自社で再現する5ステップにまとめました。業種や規模の近い事例から、自社の展開イメージを描けます。

まとめ|まず自社の流れを1枚の図にする

業務プロセス改善では、手法の名前を覚えるだけでなく、現状の業務を把握することが大切です。まずは自社の業務の流れを1枚の図にし、工程のつなぎ目に「誰から誰へ、何が渡るか」を書き込みましょう。そのうえで、ECRSの4つの観点から工程の必要性や順序、担当、作業方法を見直します。

どの業務から手をつけるかは、効果の大きさ、実現しやすさ、成果の見えやすさ、横への広げやすさの4つの観点で比較しましょう。効果と実現可能性のバランスがよい業務から始めるのがおすすめです。部門をまたいで毎週発生する業務なら、効果も見えやすくなります。

改善を定着させるには、施策の効果だけでなく、現場で継続できる運用を設計することが大切です。既存の共有先や保管場所を維持できる部分は残し、変更が必要な部分には教育やサポートを用意しましょう。

大きな改革から始める必要はありません。まずは身近な流れを1つ図にして、そこから手をつけてみてはいかがでしょうか。

業務のムダを特定したら、次は改善策を実行する方法を考えます。会議の記録のように定期的に発生する業務は、AIなどを活用して作成工程の一部を自動化することも可能です。既存の共有方法を維持しながら負担を減らせるか検討してみましょう。

変えるのは途中の手間だけでいい

会議の記録は、共有先や保管場所を維持しながら、作成工程を自動化できる業務の一つです。Otolioは録音から文字起こし、要点や決定事項の整理までをAIが自動で行い、できあがった議事録はWordやPDFで出せます。今までの共有先にそのまま流せるので、現場が覚え直す手順はほとんど増えません。14日間の無料トライアルなら、普段の会議でそのまま前後を比べられます。

この記事を書いた人
エピックベース株式会社|マーケティング部|青木喬平

2023年にエピックベースに入社し、累計利用社数8,000以上「Otolio」のマーケティングを担当。 本ブログでは、議事録・文字起こし・生成AI・AIエージェントに関するノウハウや、企業が業務効率化の実現・DXの推進に必要な情報を現場のリアルな視点からお届けしています。 ※ 本ブログはOtolio運営元であるエピックベース株式会社の社員が執筆・編集しています。

よくある質問とその回答

Q. 業務プロセス改善は何から始めればいいですか?

まずは、作業負担が大きく、改善効果を確認しやすい業務から着手しましょう。会議の準備と記録、報告書の作成、承認の受け渡しなどが候補になります。業務の発生頻度だけでなく、効果の大きさ、実現しやすさ、成果の見えやすさ、他部署への展開のしやすさも考慮して選ぶことが大切です。対象を決めたら、業務の流れを1枚の図にし、ECRSの4つの観点から改善できる工程を探します。

Q. 改善プロジェクトが失敗する主な原因は何ですか?

失敗につながる主な要因の一つは、目的が曖昧なまま進めてしまうことです。「効率化したい」といった抽象的な目標では具体策が定まらず、現場に定着しません。現場の理解や協力を得られないまま導入すると、新しい仕組みが形だけのものになり、元のやり方に戻ってしまうこともあります。

成果を測っていないことも失敗要因のひとつです。改善前の数字を記録していなければ、効果を客観的に示すことが難しくなり、次の投資判断にも影響します。また、改善が「仕事を奪うのでは」という不安を生むケースもあるため、意図を丁寧に伝えることが大切です。

Q. ITツールを導入するだけで業務プロセスは改善しますか?

ツールを導入するだけで、必ずしも業務プロセス全体が改善するとは限りません。現状の流れを整理しないまま自動化すると、不要な工程が残ったままになる可能性があります。また、教育やサポートが不足すれば、現場で使われないまま終わることもあります。

ツールはあくまで手段で、狙いは業務の質と生産性の向上にあります。入れたツール自体が新しいボトルネックになる場合もあるでしょう。まず小さく試し、現場の意見を反映しながら広げていく進め方をおすすめします。

Q. 業務プロセス改善の効果はどう測ればいいですか?

着手する前に、改善前の状態を数字で記録しておくことが出発点です。処理にかかっていた時間、月あたりの件数、差し戻しや修正の回数を記録しておけば、改善後の数値と比較できます。

処理時間だけでなく、差し戻し件数や確認にかかる時間も測定しましょう。例えば、作成時間が短くなっても確認や修正の時間が増えていれば、全体の工数は十分に減っていない可能性があります。

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