AIエージェントの知っておきたい6つの課題！活用シーンも紹介

「特定のタスクを実行するために設計された人工知能システム」であるAIエージェントが近年注目されています。今まで私たちも日常的に活用してきた生成AIとは違い、ただコンテンツを生成するだけではなく、タスクを実行するAIエージェントは企業の業務プロセスを変革できるとして、その活用方法を多くの企業が模索しています。

ただしAIエージェントを活用していくためにも、AIエージェントにはどういう課題が存在するのかを理解しておく必要があります。生成AIの活用を推進するときにも、企業はセキュリティリスクがどういうものなのかと情報収集をしながら活用してきていますが、AIエージェントにも同様に活用前に知っておくべき課題が存在します。本記事ではAIエージェントを活用するときの6つの課題についてご紹介します。ぜひAIエージェントの活用を検討している方は参考にご覧ください。

AIエージェントとは

AIエージェントとは「特定のタスクを実行するために設計された人工知能システム」を指しています。今までの生成AIと違い、ただ私たちが指示した内容に対してコンテンツを生成するだけではなく、タスクを実行するために自ら判断して動くことが可能になっています。

たとえば顧客の問い合わせに対して、分析だけではなく「最適なアプローチを行う」というゴールをもとに、自動的に対応策を検討・実行させることができます。これによって問い合わせの対応の質を高め、担当者の負担を大幅に削減することが可能になります。

その他にも今までの生成AIと違い、テキストや音声、動画といった複数の情報を同時に扱えたり、AIエージェントが行動して得られた結果を自分で評価して、改善を繰り返しながら学習し続けるという特徴があります。

AIエージェントには具体的にどんな特徴があるのかをより詳しく知りたい方は以下の記事で紹介しているので、ぜひ参考にご覧ください。

参考記事：AIエージェントの特徴とは？8つのポイントにわけて解説

AIエージェントの活用シーン3選

特定のタスクを実行することができるAIエージェントはどのようなシーンで活用できるのでしょうか。ここではAIエージェントの活用が期待できるシーンを3つご紹介します。

1. マーケティング

マーケティング活動においてメール配信といった一部の業務の自動化はMA（マーケティングオートメーション）ツールで実現できていました。しかしこの自動化のために私たちが顧客の行動を分析し、スコアリングを設計する必要がありました。

AIエージェントを活用すれば、そもそもの設計自体も自動化することが可能になります。AIエージェントは自らより学び考えることができるため、自らより最適な設計はないのかと考え、行動に対して得られた結果から常に改善活動を実施してくれます。

今まで手動で行っていたデータ分析やメール配信の手間がなくなるだけではなく、改善活動自体もAIエージェントが代わりに行ってくれるため、人的リソースをより戦略的な業務に集中させることも可能です。

2. カスタマーサポート

カスタマーサポートの活動では、顧客への早い対応やクオリティが重要になりますが、AIエージェントを活用することでより実現に向けた取り組みが可能になります。特に顧客対応が24時間求められるビジネスでは、AIエージェントを活用するメリットが高いとされています。

たとえば、顧客からの問い合わせ内容を自動で分類して応答することが可能です。もちろんすべての問い合わせをAIエージェントのみで解決することは現状難しいため、AIエージェントが自身で解決可能かどうかも判断することができ、もし解決しない場合は別途オペレーターにつなぐことも可能になります。

AIエージェントをカスタマーサポートで活用することで従業員一人ひとりの負荷を軽減しつつ、サポートの品質を安定させることもできるようになります。

3. バックオフィス

バックオフィスの業務では今でも大量の書類処理やデータ入力、問い合わせ対応などの反復的に行われる業務が存在します。AIエージェントを活用することで、こうして反復的に行われる業務を自動化することが可能になります。

たとえばAIエージェントが経費管理ツールなどにアクセスできるように、社内規定や過去のデータを参照しながら処理を進めることで、今まで起きていた人的ミスを極力減らし、また迅速に業務を完結させることが可能になります。

バックオフィスの業務は企業の基盤を支えるものであり、従業員の多くが関わる業務である以上、AIエージェントによって実現できる業務効率化のインパクトが大きいと期待されています。

ここでは代表的な活用シーンを3つご紹介しましたが、その他にもどんな活用シーンがあるのか知りたい方は以下の記事で紹介しているので、ぜひ参考にご覧ください。

参考記事：AIエージェントはどう活用できる？8つの活用シーンを紹介

AIエージェントを活用するときの6つの課題

さきほどAIエージェントの活用シーンを3つご紹介しました。ただし実際にAIエージェントを活用していくときには様々な課題が存在していることを理解しておく必要があります。ここではAIエージェントを活用するときに知っておきたい課題を6つご紹介します。

1. セキュリティのリスク

AIエージェントは今までの企業が蓄積してきたデータを活用し分析を行ったりするため、セキュリティのリスクが大きな課題として挙げられます。企業が保有する機密情報や個人情報が流出したり、不正アクセスを受けたりする可能性があり、このリスクが顕在化すると企業の信用がなくなってしまったり、法的責任追及につながることもあります。

たとえばAIエージェントをクラウドサービス上に構築して外部と連携させる場合、通信経路が暗号化されていなかったり、アクセス制限が十分に設定されていなかったりすると、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクが格段に高まってしまいます。

そもそもAIエージェントは学習や推論のために大量のデータを取り扱うため、今までよりも広範囲な情報にアクセスするケースが増えています。人事情報や契約情報など、本来は厳重に管理されるべきデータであっても、AIエージェントがタスクを実行するために、一度に情報を収集し、まとめて管理することがあります。そのために常に「本当に必要なデータだけを集めているか」「適切に暗号化やマスキング処理を施しているか」「権限のないスタッフがデータにアクセスできる状態になっていないか」といった視点での監査が求められるようになります。

またAIエージェントの学習モデルの更新は頻繁に行われるため、そのたびにセキュリティのアップデートをしなければならず、これを怠ると新たな脆弱性を生み出してしまう可能性があります。そのため常に最新のセキュリティ対策をしていく必要性が求められます。このように、AIエージェントを活用するためにも、セキュリティのリスクを理解し、対策を講じることで、AIエージェントの潜在的なメリットを安心して受けることができるようになります。

2. 倫理的な懸念

AIエージェントを活用するためにも、その意思決定プロセスやアウトプットに対する倫理的な懸念も忘れてはいけません。タスクを実行するために、AIエージェントは膨大なデータを分析し、結果をもとに顧客の選別や価格の設定などを行う場面が考えられます。こうした意思決定プロセスがブラックボックス化してしまうと、その判断の根拠が不透明になってしまう可能性があります。

たとえば、採用活動でAIエージェントを活用するときに、AIが自動で自社の採用候補基準にあった候補者を振り分ける仕組みを構築したとして、特定の人物を不利に扱っていると疑われるケースが海外でも報告されています。このような判断は企業の評判に深刻なダメージを与える可能性があるため、AIエージェントを活用するときには考慮しなければならない課題の一つとなっています。

企業がAIエージェントを活用するときは、その透明性、公平性、安全性などを踏まえて慎重に運用することが求められます。またAIエージェントにすべての判断を任せず、人間が最終的にチェックを行う仕組みによって回避することも可能です。

3. データ品質とバイアスの問題

倫理的な懸念と近しい課題ですが、AIエージェントの活用を想定したときに「データ品質とバイアスの問題」を理解しておく必要があります。AIエージェントを活用するときには、大量のデータをもとに学習させ、意思決定や予測パターン抽出などを行います。ただしこのときにデータが不正確であったり、偏り（バイアス）が含まれていれば、そもそもAIエージェントのアウトプット自体が誤った方向に導かれる可能性が高くなってしまいます。

たとえば顧客満足度を予測するモデルに偏ったデータしか含まれていない場合、ある特定の知識や特定の年齢層を過剰に高く評価してしまって、それ以外の顧客を正確に評価できないという問題が発生します。このようなバイアスの問題は、マーケティング活動を偏った形で進めてしまう可能性があり、特定の顧客層を不当に扱ってしまうというリスクが存在します。またそもそものデータの重複や欠損、フォーマットが統一されていないなど、データの品質に問題があれば、AIエージェントが正確な学習を行えずに、パフォーマンスが低下してしまうこともあります。

このようにAIエージェントをビジネスで活用するときは「データ品質とバイアスの問題」という課題は避けて通れないテーマとなります。正確で偏りの少ないデータを使って、定期的なモニタリングや改善を繰り返すことで、AIエージェントの能力を最大限に引き出すことができ、業務プロセスを合理化・効率化することが可能になるのです。この取り組みを怠れば、誤った意思決定を引き起こすリスクが高くなってしまいます。企業としては、AIエージェントを活用するときに、データ品質やバイアス対策のコストも含めて総合的に評価し、長期的な視点でシステムを運用していくことが欠かせません。

4. 技術の複雑性

AI（人工知能）の技術をベースにしているAIエージェントは、複数の技術が組み合わさっている場合が多く、システムの設計や開発には高度な専門知識と豊富な経験が必要とされています。また開発の段階だけではなく、運用の複雑さも課題として挙げられます。AIエージェントは自ら学んでいくことが可能なため、その判断基準を更新し続けます。そのため運用後にも定期的なアップデートが欠かせません。

また技術の複雑性が高いため、社内の既存システムとの連携も課題になります。AIエージェントが単独で高度な処理を行ったとしても、それが既存の営業支援システム（SFA）や顧客管理システム（CRM）などと連携できなければ、業務フロー全体としての効率化は限定的となってしまいます。こうした既存システムと上手く連携できるようにしていく活動も、AIエージェントを上手く活用するために欠かすことができません。

技術の複雑性という課題を解決するためにも、社内に専門知識を持つ人材を確保すると同時に、外部ベンダーやコンサルティング会社と協力していくことが重要になります。また実際に活用していく段階では、データの準備、モデルの学習、システム統合、そして運用監視・改善といったプロセスを段階的に進めていくことで、技術の複雑性という高いハードルを越えていくことが可能になります。

5. 説明性・透明性の確保

AIエージェントの最大の特長は、人間の介在が少ない状態で、複雑なタスクを自動化できる点にあります。ただその反面、どうやってAIが判断をしているのかが分かりづらいという難点もあります。そのため企業の業務でAIエージェントを活用する場合、判断のプロセスが不透明だと、社内外で大きな混乱を招く可能性があり、判断の説明性や透明性を確保する必要があります。

たとえば金融業界の融資のシーンでAIエージェントを活用していると想定します。融資の審査にAIエージェントを活用し、なぜある顧客は審査に通過したのに、別の顧客は審査に落ちてしまったのか、その理由を説明できなければ、不正などが疑われるリスクが存在します。こういった事態を避けるためにも、AIエージェントの判断プロセスを一定に説明できる体制を整えることが必要です。

この「説明性・透明性の確保」課題に向き合い、きちんと説明責任を果たし、透明性を保つことができれば、企業の信頼が増し、「安心して任せられるパートナー」として評価され、さらにビジネスの成長を加速させることが期待できます。

6. 組織ルールの整備

最後にAIエージェントを活用するにあたって、組織としてのルールを整備する必要があります。AIエージェントの技術が高度化すればするほど、企業としては新たな使用ガイドラインや運用フローを定めなければなりません。活用におけるルールの整備のみならず、さきほどご紹介した「セキュリティリスク」に対応するためにも、AIエージェントが扱えるデータの範囲やアクセス権限を明確に設定していくことが重要です。

またAIエージェントに対するフィードバックの体制も整備することが重要になります。AIエージェントは初期段階では誤認識や誤判断しやすい傾向にあり、フィードバックを受けながら判断を最適化していくというプロセスが存在します。逆にいうとフィードバックをしなければ、AIエージェントの精度を高めることができないともいえるため、フィードバック体制を整えることで、より最適な活用が見込まれます。

ルール整備は一度作って終わりではなく、技術や業務環境の変化に合わせて、継続的に見直すことが重要です。AIエージェントの性能向上や新機能の追加、あるいは法規制の変更などに合わせてルールをアップデートしないと、企業が本来期待していたメリットを十分に発揮できない可能性があります。こうした取り組みを通じて、企業はAIエージェントを長期的に安定して活用することができ、競争力を高めていくことが可能になります。

まとめ｜AIエージェントを活用するためにも課題を理解しよう

AIエージェントは今までの生成AIのようにコンテンツを生成するのではなく「特定のタスクを実行する」ことができます。またマーケティングやカスタマーサポート、バックオフィスの活動など幅広く活用できることが想定できるため、多くの企業が業務プロセスでどう活用できるかについて注目しています。

一方でAIエージェントに限らずAIの技術には課題が存在します。主にセキュリティリスクであったり、倫理的な懸念があげられますが、AIエージェントを上手く活用していくためにも、これらの課題に着目し自社でどういうふうに向き合っていくかを明確化していく必要があります。AIエージェントが私たちの業務を変革していくことは目に見えていますが、これらの課題にもしっかりと向き合い、AIエージェントの活用を最大化していきましょう。